いのちの木
森の中にいつも親切で、思いやりのあるキツネがいました。仲間の動物たちと幸せに暮らしていましたが、ある日、大好きな森の景色を眺めたあと静かに亡くなってしまいます。森の仲間たちはキツネの周りに集まって、いつも親切で思いやりのあったキツネのことをみんなで思い出します。すると、キツネが横たわっていた雪の下から、オレンジの木の芽が出てきます。キツネの思い出が語られるたびに、オレンジの芽はふくらみ伸びていきます。動物たちが語り合っているとオレンジの芽は伸び続け、動物たちはキツネが一緒にいてくれるのだと強く思います。時が経つにつれ、みんなの心は軽く晴れやかになっていきます。オレンジの木は森の仲間全ての生きる力、心の支えとなり、キツネの魂は仲間の心に残っています。
せんせいからのコメント
聖心女子学院初等科
『いのちの木』は「死を迎えてこの世から姿を消しても、残されたまわりの者たちの心の中で生きている。」という命の意味や魂を受け継ぐことについて教えてくれる、残されたものの心の再生を描いた本です。
絵のもつ静けさや温かさもすてきです。雪で白一色となった森の中でひっそりと息を引き取るキツネの姿には、美しさを感じます。また、オレンジ色のキツネが生まれ変わったように、同じ色の芽・葉・枝を伸ばし、大きく立派になったオレンジの木のもとに森の仲間が戻って来る場面は、キツネと森の仲間たちが強い絆で結ばれていたのだなと思わずにはいられません。最後のページで、キツネが凛とした姿で読者の方を見ています。読者を見守っているような優しい眼差しのキツネの姿が、いつまでも心に残ります。