小さなホセとロバの旅
知らない世界を知り
知らない人に出会う
“もしも~が~”という、今や未来へのあこがれ、空想
違う時を生き 違う「今」を生き 違う「私」を生きる
本のもつ力、本の魅力を満喫する。
いとおしむように片耳のロバを抱くホセのまなざし。信頼しきったロバの目。
ハンス・バルツァーのやさしく力強い挿絵が物語をぐいぐいと引っぱっていきます。
たぶん子どもにとっては聞いたこともない、行ったこともないボリビアという国。
アンデスをわたる風。大昔から人々によって踏み固められた古い古いじゃり道。
そのインディオの道をたった一人で歩いている小さな少年。名はホセ。
山の精やインディオの神々の世界が混沌と混じりあうアンデスの山々のふもとでひとりぼっちの小さなホセは大きな灰色の片耳のロバと出会います。
大きな町ポトシに行けばきっとパンがある。かあさんに持って帰らなければ。
簡単ではない 生きること。
辻音楽師のペドロの奏でる古楽器ラウテの響き、仮面まつりの喧騒、生きるのに精いっぱいのたくましい少年たちとの出会い。そんな中でホセは心からの喜びを何度も体験します。
前へ前へと駆け抜け生き抜く生命力にあふれた世界に魅了されます。
せんせいからのコメント
明星学園小学校 明星学園図書室司書 吉田美知子
どのような本を子どもに手渡すのかということは大事な事です。特に昨今のように子どもが子どもでいることが難しい時代には子どもの本の役割は大きいと考えます。
明星学園図書室で考える「子どもの本」とは
*行ったきりにならず 必ず帰ってくるということを感じとれる。
いつでも帰ってこられる暖かい愛情、場所があるからこそ子どもは冒険できるのです。
*「主人公」を見守る信頼する人や事柄がきちんと書かれており、これから生きていく未来は楽しいものだと人生を肯定することができる
*作家が子どもを信頼している
そんな本を図書室に揃えながら、石井桃子さんの子どもへのメッセージを私たち大人の責任として捉え「子どもの本」の力を信じて、本を手渡していきたいと思っています。
子どもたちよ
子ども時代をしっかりと
たのしんでください
おとなになってから
老人になってから
あなたをささえてくれるのは
子ども時代の「あなた」です。
石井桃子
2001年7月18日